わたしは植え、アポロは水を注いだ。しかし、成長させてくださったのは神です。

コリントの信徒への手紙一3章6節

医学や生物学の世界では、遺伝子に注目した研究が盛んに行われています。ヒトの遺伝子全体の構造を解明しようとするヒトゲノム計画が進み、その成果を生かしてさまざまな病気の原因を探索するばかりでなく、人間の行動や判断のメカニズムまでも遺伝子の中に読みとろうと試みています。

「人の共感能力の一定割合に遺伝子が関与する」という記事をインターネット上で見かけました。読んでみますと、さほど目新しい内容ではありませんでした。ヒトの能力が遺伝と環境で決定されるのはあたりまえのことですし。しかし、こうした情報が「人はしょせん生まれつき決まっており、それを動かすことはできない」という諦めや、学び・教育の効果への疑いを助長するならば問題です。

子どもであれ大人であれ、できないことではなく、できることに注目してこそ、「成長」への扉が開かれるのですから。

人は遺伝的な制約を超えることはできません。しかし遺伝的に約束された可能性をどこまで実現できるかは、経験よって決まることです。そして私たちの中には 私たち自身が思っているよりもはるかに大きな可能性が、神様の手によってつめこまれています。

とりわけ可能性のかたまりである子どもたちに、「お互いに大切にしあう」共感の遺伝子を最大限に開花させてほしい。それが幼稚園での子どもたちの生活において強く願うことです。

園長牧師 佐野真也