沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい。
ルカによる福音書5章4節
一晩中漁をして成果が得られず、疲れて網を洗い、後片付けをしていた漁師たちに、もう一度舟を出してくれと言うイエス様。一晩中漁をした自分たち専門家に指図をするのかといぶかしげにしぶしぶ従うシモンたち。
ところが予想は大きく裏切られて、網が破れるほどの魚がとれてしまうのです。驚き恐れたシモンはイエス様に「主よ、わたしから離れてください、わたしは罪深い者なのです」と言って足元にひれ伏します。その時に、イエス様が言った言葉が「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる。」です。
イエス様は漁師たちに圧倒的な力を見せます。彼らにとって、一番信頼できる方法で。「人間をとる漁師」もまた、彼らのための言葉です。
実際に、シモンは通称をペトロとし、イエスの一番弟子として生涯を過ごすことになり、彼が伝えたイエス様の教えは世界に広まり、多くの人々の心を捕まえることになるのです。
しかしこの時のシモンたちには、その先の未来のことは分かりません。ただ「この人について行きたい」という気持ちと「一緒に行こう」と言ってもらえた喜びだけがあったのではないかなと思います。
シモンには自分の人生をどう生きていくかについてある渇きを持っていたのではないか、と思います。「今のままの人生では満足できない。何かが足りない。この人と一緒に歩めるなら今と違う、望んでいる人生が送れるのではないか。」そういう予感の中で彼らはイエス様の言葉を聞いたのだと思うのです。